❸オンラインでの対話の場づくりの工夫(その1)

こんにちは!石塚計画デザイン事務所(通称「石デ」)の3代表の一人、ボーダーTシャツが大好きな千葉です!ワイシャツはストライプが好きなのですが、リモートワークがメインとなりワイシャツを着る機会はめっきり減りました!(そういう意味では仕事と服装の関係もコロナ禍で大きく変化していますね!)

さて、3度目の緊急事態宣言が延長しましたね。前回の記事ではリアルな対面のワークショップを三密に配慮しながら実施する際の工夫についてお話しましたが、緊急事態宣言が出ている状況ですと対面ワークショップは中止と判断されることが多いですよね。そこでオンラインでワークショップってできるのか?という話になるわけです。

このシリーズではコロナ禍の参加の場づくりについて、下の図中の❶〜❹の4つのアプローチについて紹介しています。

今回は『❸オンラインでの対話の場づくりの工夫(その1)』についてです。

コロナ以降の参加の場づくり体系図cs6ol

コロナ禍で不要不急の外出を控え、仕事もリモートワークが推進された結果、ZoomなどのWeb会議ツールを利用したセミナーやシンポジウムなどが増え、もはやそれが主流となっていると言っても過言ではありません。

こうしたWeb会議ツールや様々なオンラインサービスを工夫して活用することで、リアルなワークショップをオンラインに変換することはある程度できるのではと考えています。それが「リアルの代替」を超えて「新しい参加の場の創造」につながることができれば最高なのですが、まだメリット・デメリットを天秤にかけながら、一歩ずつ試行錯誤している段階です。ここでは実際にこれまで取り組んできたことを共有していきたいと思います。

「イベント配信」は参加のまちづくりをオープンにする

2020年3月。ほとんどのイベントが中止になった時に実施されたイベントがありました。それは、無観客配信型のイベントです。
本来は観客を入れて実施するはずだったシンポジウム型のイベントは、主催者の判断でYouTubeとFaceBookライブを同時に配信する無観客イベントに切り替わりました。私は、そこでグラフィック・レコーディングをすることを依頼され参加しました。

そこで、コロナ禍だからということに留まらず、今後の方法論の一つとして配信は重要だと感じました。

配信で可能になったこと
・リアルな場ではなくても、双方向なコミュニケーションとして、コメント欄への記入に対してリアルタイムで会の進行が対応できる。
・配信後も、動画がインターネット上にアーカイブされることで、リアルではその現場に参加した人にしか届けられなかった情報が、後で関心を持った人にも届けることが可能に。これは、今までの参加の場では30人〜100人ぐらいの人としか共有できなかったことが、もっと多くの人に届けることが可能になったのだと思いました。

という可能性が開けた一方で、技術的なハードルも高いということも理解しました。このイベントの時の機材の状況は次のような感じでした!株式会社LockUPさんすごい!

ロックアップの配信

配信はテクニカルな部分が本当に重要!
・現場の状況をわかりやすく伝えるためには、複数のカメラを用意しそれをスイッチャーという機材を使用して切り替えたり、カメラで必要な状況を捉えるカメラワークが必要。つまりカメラや配信にスタッフが必要。
・音声がきれいに収録できていないと、何の話をしているのかがわからないので、マイクがとても重要
高速のインターネット環境が必要。主催者(ホスト)はネットが途中で途切れたり遅延したりしない安定した通信環境(無線よりは有線LANがあることも大事)。

つまり、ビデオカメラをPCにつなげて、そこに写っているものをそのまま適当にオンラインで配信すれば良いんだよね?という程度の認識ではおそらく伝わりにくいものになってしまい、どうしてもそれを見たいと思う人以外には見てもらえないでしょう。今までまちづくりに興味を持っていなかった人に興味を持ってもらえないと、Web配信をしているという可能性の扉は開かないのだと理解しました。

そこで私の場合は、2つのことをしました。

①配信のプロから、必要な技術を学び、必要な機材を購入する
私たちがオンラインでワークショップをやろうとした時に、どんな技術や機材が必要かプロにマンツーマンで教えてもらい、必要な機材は購入しました。買っても使わないと覚えないので、社内向け講座やワークショップをたくさん開催して、機材やアプリの経験値を上げるようにしました。

②配信のプロと仕事でコラボレーションする体制をつくる
配信のプロに、絶対失敗できない仕事は外注することにしました。予算はコロナ禍になることなど想定してない訳ですから、外注費は積んでいない訳ですが、ここは投資と考えて成果を出してまちづくりの世界にこうした技術が必要だというニーズを浸透させることに徹しました。

大事なのは、①の自分でもできるという選択肢を持つことだと思いました。学べば学ぶほど、オンラインイベントの企画を詰めていくとたくさんのリスクが見えるようになります。そこで、自分たちが最大限に頑張って自前で実施するか、外注するかを常に判断する視点が得られたと思っています。

見える化(ファシリテーション・グラフィック)の重要性

上記のイベントでグラフィック・レコーディングをお手伝いした時、その会でどんな議論があったのかを見える化することが、リアルな会議以上に求められていると感じました。

スクリーンショット 2021-01-21 11.27.17

それは、Zoomを使ったワークショップのファシリテーション・グラフィックをお手伝いした時に確信しました。そのワークショップは、福祉のまちづくりの計画改定のために、様々な障がいのある人に意見を聞く場だったのですが、同じ場所にいないことや、情報の受け止め方が参加者のネット環境や障がいの状況で違う中では、どんな議論になったのかをリアルタイムで記録し共有することが大事なのです。

ファシグラ

また、聴覚障がい者の方はZoomの手話通訳の人の画面を注視したいのですが、Zoomの「画面共有」機能が使われると画面が奪われてしまい手話通訳が見えなくなってしまうとか、チャットに添付書類を共有されたら、視覚障がい者はそれを読み上げソフトで確認しなくてはならないということがミュートされていない時に理解できたりと、Web会議を通して障がいを通したコミュニケーションの違いがいろいろ確認できたのは、これからオンラインでのワークショップを考える上では貴重な体験となりました。

Zoom手話通訳イラスト

「見える化」には、書いている過程を中継できるとより良い

私はファシリテーション(進行)しながら同時に模造紙やホワイトボードを書いていくスタイルで今までやってきたのですが、最近は書き出し(ファシリテーショングラフィックスやグラフィックレコーディングなどの見える化)だけを頼まれることもあり、その場合、中間発表や最後出来上がった模造紙やホワイトボードを参加者に共有することが私の出番になります。
一方、いろいろな障がいがある人が参加するオンラインワークショップの環境では、今何を話しているのかを見える化していくこと自体が重要になります。書いている手元をリアルタイムで撮影して参加者に届けるために、下の絵の様に、カメラで模造紙の書いている手元を写してくれる人とダッグを組んで進めました。可能ならばこうした役割はとても大事だなと思います。

模造紙書きを中継

模造紙やホワイトボードの見える化の場合、カメラに張り付く人が必要で大変な面もあるのですが、下の写真のようにiPadなどのタブレットを使って共有する方法(ライトニングケーブルでPCにつないでいればZoomで画面共有できる)や、PCの打ち込み画面を共有する方法など、工夫次第でいろいろなやり方ができそうです。Googleドキュメントを使えば、同時に複数の人で編集しながら議事録をつくることも可能です。

ipadによるファシグラ

Zoomを使った会議で、リアル以上に配慮が必要なこと

Zoom等のWeb会議のしくみを活用することで、通常の会議はもちろん、ヒアリング、意見交換など、物理的に人を集めなくても実施可能になりました。これを読んでいる方の多くは、Zoomで会議をすることがすでに日常にようになっている人も多いと思いますが、改めてZoomなどのオンラインの会議の対話の場でクリアしなくてならないことを整理してみましょう。

参加形態(PC、タブレット、スマートフォン)によって、参加者が受け取れる情報や、リアクション(書き込む、操作する)できることが異なる
スマートフォンは画面が小さいので、画面共有された情報が読みにくいことや、書き込みや操作などはPCに比べて難しい面があることを主催者は知っておかなくてはならない

参加者の通信環境によって、様々なハードルが発生するので事前の接続確認がとても重要になっている(いきなり本番はキケン!)
・Wi-Fiなどの通信環境が遅いと映像が遅延する(通信制限がある契約だと難しい)
・マイクの性能や通信環境によって、話しが聞き取りづらくなることがある
・家の環境音を拾うと会議そのものが聞き取りづらくなる(家族の声や音、外の音、来客)

□オンラインのトラブルシューティングのスタッフ配置が必要
・参加者の承認(受付)、チャットや質問の集約、接続できない、声が出ないなどの技術的トラブルへの対応といったものに対応するスタッフを確保することが大事

□音の環境を主催者は整えること!
・音声や映像がきれいに届けられるような機材(ヘッドセット)や、雑音が入らない場所で実施するなど(同じ場所でつなぐとハウリングする)

□オンラインならではのコミュニケーション術が必要に!
・どこを見ているのか?参加者がどういうコンディションなのかを把握して進行することがリアルよりははるかに難しい状況になった
・大きなリアクションが必要
・注意事項の共有(録画する、ブレイクアウトルームを使う)

ということで、今回は情報量多めなので、オンラインで付箋を使ったワークショップをやれるのか?といった話は次回で紹介したいと思います。

次回は『❸オンラインでの対話の場づくりの工夫(その2)』です。

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